パライバ伝説始まりの地HEITORITA鉱山

 この記事では、2023年11月と2024年3月に二度にわたり見学させていただいたエイトーリタ鉱山の様子を紹介しています。特に2024年3月には、中宝宝石研究所の北脇博士と国立科学博物館の門馬博士にご同行いただきました。その際の詳細は、中宝宝石研究所が発行しているCGL通信vol66「ブラジル/パライバ・トルマリン鉱山を訪ねて」に掲載されています。

 ご興味のある方は、北脇博士によるパライバトルマリンの歴史がわかりやすく説明されていますので、ぜひそちらもご覧ください。中央宝石研究所のホームページ上に掲載されています。

 ここは、パライバ伝説の始まりの地、「HEITORITA(エイトーリタ)鉱山」です。

 この鉱山で、世界で初めてパライバトルマリンが発見されました。伝説のガリンペーロ(鉱夫)であるエイトー氏が、パライバを発見したのは1982年のことです。

 現在、この鉱山はエイトー氏の息子、セルジオ氏が所有しています。残念ながら、コロナの影響もあり、2023年11月時点では稼働していませんでした。

 元々はひとつの鉱山だったバターリャの鉱区ですが、権利関係の問題もあり、現在は3つの鉱区に分割されています。
 具体的には、ジョン・ヒッキー氏の鉱区、ハニアリー氏の鉱区、そしてこちらのエイトー氏が所有するエイトーリタ鉱山です。

 エイトーリタ鉱山の事務所から鉱山へは、このような長い階段を下ります。
 強い風と強い日差しが照りつけ、なかなかハードな道のりです。

 鉱山敷地内には、過去に掘られた縦穴がいくつも残っています。こちらの穴はしっかりと蓋がされていますが、このような古い縦穴に気づかず、事故が起きることもあります。そのため、鉱山の鉱区内を歩く際は十分な注意が必要です。

 こちらは「ライン」と呼ばれるペグマタイト脈です。この白い部分がカオリンの脈で、パライバトルマリンが含まれている可能性があります。ですが、どの脈にパライバトルマリンが含まれているかを予測するのは非常に難しく、実際に掘ってみるまでわからないのが現状です。

 こちらはエイトーリタ鉱山の横杭入口です。ここから、一般的にイメージされる洞窟の中に入っていきます。内部は蝙蝠の巣窟となっており、ところどころで蝙蝠が飛んでいるのが見られます。

 こちらが横杭内の縦穴です。底が見えないほど深く、その深さには恐怖を覚えるほどです。ここで初めて自分が高所恐怖症だと気が付きました。

この穴はガリンペーロによる手掘りで掘り進められたもので、左手に見える梯子を使って50メートル以上を降りていたそうです。
 現在、こちらは稼働していません。

 元々、この鉱山はカオリンという粘土質の鉱物を採掘するために開発されましたが、パライバトルマリンが発見されたのは偶然だったそうです。
 もちろん、鉱山では水晶やトルマリンなど、さまざまな鉱物も採掘されますが、採算が取れるほどの量ではありません。

 事務所には、伝説のガリンペーロ「エイトー氏」の写真が飾られていました。この方がエイトー氏です。

 現在は稼働していないエイトーリタ鉱山ですが、将来的には再び稼働させる予定のようです。その時、再び新たな伝説が生まれるかもしれません。

 こちらは、当時この鉱山で実際に使用されていた車です。現在は朽ち果てていますが、その姿にはとても独特の雰囲気があります。
 将来的には、この車が博物館などで展示されるのかなと、ふと想像してみました。その歴史を感じると、ぜひ多くの人に見てもらいたいと思います。

 現在、エイトーリタ鉱山での採掘は停止していますが、過去に採掘された原石は残っています。しかし、現状では新たな採掘が行われていないため、今後、バターリャ産のパライバトルマリンの市場供給量は減少していくことが予想されます。

 エイトーリタ鉱山ではさまざまな鉱物が産出されていますが、採算が取れるほどの鉱物はあまり多くありません。
 元々カオリンを商業的に採掘していた鉱山にとって、パライバトルマリンの発見は非常に大きな出来事でした。パライバトルマリンが見つかったことで、鉱山は一躍注目を集め、世界的な宝石市場に影響を与える存在となりました。