現役稼働中の近代的な鉱山 BRAZIL PARAIBA MINE
この記事では、2023年11月と2024年3月に二度にわたり見学させていただいたBRAZIL PARAIBA MINEの様子を紹介しています。特に2024年3月には、中宝宝石研究所の北脇博士と国立科学博物館の門馬博士にご同行いただきました。その際の詳細は、中宝宝石研究所が発行しているCGL通信vol66「ブラジル/パライバ・トルマリン鉱山を訪ねて」に掲載されています。
ご興味のある方は、北脇博士によるパライバトルマリンの歴史がわかりやすく説明されていますので、ぜひそちらもご覧ください。中央宝石研究所のホームページ上に掲載されています。

こちらはパレーリャスにあるBRAZIL PARAIBA MINE(通称BPM)です。
「パレーリャス産」や「バターリャ産」とよく耳にしますが、これは地名を指しています。BPMがあるパレーリャスはパライバ州に隣接するリオ・グランデ・ド・ノルテ州に位置しています。

BPMは非常に近代的な鉱山で、従業員数も200名を超えます。現在も稼働しており、産出量は1トンの土砂を処理して1カラット以下という状況です。しかし、パライバトルマリンはまとまって産出されることが多いため、その可能性を信じて掘り続けています。
宝石を採掘するというのは、単なる採算だけではなく、まさに「ロマン」が重要な部分を占めているのです。

BPM鉱山の内部は非常に近代的です。最深部は150メートルに達しており、その深さへはエレベーターで降りていきます。
今回は特別に、その地下の世界を見せていただくことができました。

鉱山の内部は基本的に撮影禁止ですが、今回は特別に写真撮影とネット上へのアップロードの許可をいただいています。

縦穴と横穴が交差し、地下の世界はまるで蟻の巣のようです。
もし未来の人々が発見したら、地下帝国なんて言われそうなほど広大で複雑な構造です。
内部は重機が通れるほどの広さがあり、土砂は電動のトロッコで運ばれます。

これだけ採掘しても、産出量は極めて少なく、現在流通しているパライバトルマリンは、過去に産出されたものが少しずつ市場に流れているだけです。
現時点ではほとんど新たに産出されていないため、パライバトルマリンが高価である理由も納得できます。

2024年現在、ブラジルで唯一稼働中のBPMでは、この日も実際に採掘作業が行われていました。
唯一稼働中のこのBPMでも、まったくパライバトルマリンが当たらない時期には、数か月、さらには数年単位で産出がないこともあります。

パレーリャス産のパライバトルマリンは、巨大な水晶と共に産出されることが多いです。一方、バターリャ産のパライバトルマリンはカオリンの中に混ざっており、採掘はバターリャの方が比較的容易だと思われます。
パレーリャスでは、ダイナマイトを使って爆破しながら採掘が行われており、その方法はかなりダイナミックです。

採掘された土砂は地上に運ばれ、洗浄・粉砕された後、最新の機械で選別されます。しかし、機械だけではすべてを見逃さずに選別することが難しいため、最終的には人の目で選別が行われます。
この手作業による選別が、精度を高めるために非常に重要な役割を果たしています。

こちらが選別されたパライバトルマリンの原石です。しかし、宝石品質のものはごくわずかで、非常に貴重です。
パライバトルマリンはその希少性が際立っており、見つかる確率が低いため、まさに希少な宝石と言えます。

パレーリャス産のパライバトルマリンは、色合いが比較的均一で、薄めの色合いが多いです。
一方、バターリャ産は色の幅が広く、特に圧倒的なネオン感を持つものが多い傾向にあります。
もちろん、個体差はあるため、どちらの産地でも美しい色合いのパライバトルマリンが見つかることがありますが、一般的にはこのような違いが見られます。

一部のパライバトルマリンは、このBPMのオフィス内でカットされています。これらは、現地で加工されて品質を高めた後、世界中の市場に向けて販売されます。また、他の一部はそのまま原石の状態で海外に輸出され、現地の宝石カッターによって後で加工されることもあります。

こちらが現地でカットされたパライバトルマリンです。
現在採掘されているパライバトルマリンは、小粒な原石が多いため、カットされた石で直径2mmを超えるものはなかなか産出されません。そのため、大きなサイズのパライバトルマリンは非常に希少で、高価なものとなっています。

こちらはBPMのオフィス内に展示されている、8,620kgのパライバトルマリンの原石です。この巨大な原石を目の当たりにすると、その迫力に圧倒されます。
いつか、私たちの鉱山でもこのような素晴らしい原石が産出されることを願っています。