さて伝説を創造しようじゃないか GLORIOUS MINE
この記事は、2023年11月と2024年3月に行われた鉱山開発の予備調査の様子を紹介したものです。特に2024年3月には、中宝宝石研究所の北脇博士と国立科学博物館の門馬博士にご同行いただきました。その際の詳細は、中宝宝石研究所が発行しているCGL通信vol66「ブラジル/パライバ・トルマリン鉱山を訪ねて」に掲載されています。ご興味のある方は、北脇博士によるパライバトルマリンの歴史がわかりやすく説明されていますので、ぜひそちらもご覧ください。中央宝石研究所のホームページ上に掲載されています。
コロナの影響で採掘が停止していた「GLORIOUS MINE」を再稼働させるためのプロジェクトの始まりの話です。
偶然の出会いから、このプロジェクトに参加することになり、採算よりもロマンを追い求めるという思いで取り組んでいます。
いつの日か、自分の鉱山で採掘したパライバトルマリンを皆さんにお届けできるよう、全力で頑張っていきます。
2023年11月 第一回GLORIOUS MINE予備調査
ブラジルのパライバ鉱山の視察に行くことが決まった。2023年6月に石垣島で呑みながらそういう話になったのである。そこまでのいきさつも、まるでドラマのような予期しない展開が続くのですが、長くなるので、また別の場所で詳しく書こうと思います。
とりあえず、この旅の初めの部分はトラブル続きでした。私たちは5人のグループで、同じ便が取れなかったため、4人は成田発、残りの1人は羽田発に分かれました。LAで合流し、サンパウロからジョアンペソア(パライバ)へ向かう予定だったのですが、成田発の便が遅れて、私たち4人はLAでのトランジットに失敗。次のサンパウロ便を待つよりも、ペルーのリマに行った方が早いということで、急遽LAからリマ行きに変更。長いトランジットの間に、LA空港からハリウッドへドライブしたり、リマに着いてからも市内を観光したりしていました。リマで飛行機に乗る直前に、なぜか1人のチケットが別便だと気がつく。その便はすでに飛んでしまっており、1人がリマで脱落。
残った3人はサンパウロへ飛び、ジョアンペソア行きの便へのトランジットでもまた失敗。ブラジリアに飛ばされ、その後無事にジョアンペソアに到着。リマで脱落した仲間も遅れて合流し、全員が揃ったのは予定より2日遅れ。
こんな経験は初めてだったけど、みんなトラブルを楽しめる性格だったため、道中はとても楽しかったです。それでは、ここからは予備調査の様子を紹介したいと思います。

我が「GLORIOUS MINE」です。コロナの影響で稼働が停止していたため、鉱山入口のゲートは錆びついていましたが、現在はキレイに塗りなおされています。
最初にこの鉱山の予備調査に来た時は、単純にお手伝いをしていただけだったので、まさかその後、自分が会社の株式を取得し、鉱山開発に携わることになるとは思ってもいませんでした。このプロジェクトの成り行きに驚きつつも、非常にありがたく感じています。

作業スペースに仮設テントを作成しました。テントというかトラックの幌を木にかけただけですが、今回は予備調査ですので、とりあえずあるもので何とかします。
ここは広大な鉱山のてっぺんです。電気も水も電波もありません。ここまで来るのも悪路を登らねばならず、ひと苦労です。

今回掘るのはこのあたり。実際の鉱区は驚くほど広いです。何年掘っても出ないかもしれないし、一回目で出ちゃうかもしれないし。ロマンの塊です。
過去にパライバトルマリンを産出した実績もありパライバトルマリンが眠っているのは間違いないのですが、この広大な土地のどこから出るのか?パライバの女神のみぞ知るといった感じです。

まずは重機をいれます。硬い岩盤と岩盤の間、ペグマタイト鉱床を掘り進めます。どこまで重機で掘れるのか?重機が入れないほど狭くなった場合は手で掘り進めます。
この出てきた土砂を洗い、パライバトルマリンが混ざってないか、パライバトルマリンと共に産出する鉱物が混ざってないか、人力でチェックします。

こちらが掘っているペグマタイト脈のカオリンです。元々、この鉱山はカオリンを産出する鉱山として稼働していました、今後はこのカオリンも含めて販売していく予定です。
カオリンはさまざまな産業で利用される重要な鉱物ですので、これをうまく活用することで鉱山の持続可能な運営にも貢献できると考えています。

トラックで土砂を一か所に集め、それをひたすら確認する作業開始です。乾燥していますがとても暑い中の作業です。一気に日焼けしていきます。
大問題発生です。ここには飲用以外の水がありません。水がないと土砂を仕分ける作業ができません。とりあえず、持参した水を使用しますが、これでは圧倒的水不足です。

来ました!給水車が来ました!というか、あの悪路をよく登れたなぁという感じのトラックです。4WDでも結構苦労するし、たまにみんなで後ろから押すような悪路です。
でもこれで作業が続けられます!ありがとう給水車!

これが給水車の水です。現地では飲用として使われます。色がついているのはミネラルが豊富だから問題ないのです。でもこれ雨水貯めたものを買い取って集めているので、あまり日本人にはおすすめしません。でも作業用水としては十分です。一気に作業が進みます。

現地で調達できる材料や道具を使い、土砂を洗い、選別していきます。果たして、パライバトルマリンが見つかるのでしょうか?
鉱山での採掘は常に予測不可能なもので、長期間掘っても結果が出ないこともありますが、その分、発見されたときの喜びは格別です。

水晶やトルマリン、雲母、カオリンといったさまざまな鉱物が確認できる中で、どこかにパライバトルマリンが紛れているかもしれません。こういった鉱物を一つ一つ丁寧に調べながら、良い知らせを見つける瞬間が楽しみです。
どんな小さな兆しでも見逃さないように、集中して選別していきます。

今回採取できたサンプル、緑色の石がパライバトルマリンかどうか期待しましたが、分析結果がガーナイトだったとのこと。やはり、宝石の採掘は簡単ではないですね。しかし、こうした挑戦を繰り返しながら、次の一歩に繋がる発見があるはずです。
次回こそ、パライバトルマリンが見つかることを祈っています!
2024年3月 第二回GLORIOUS MINE予備調査
第一回目の予備調査後、何度か話し合いを重ねた結果、今回の調査に参加した5人で「GLORIOUS MINE」の開発を進めることになった。これに至るまでには、運命的な助言やオカルティックな出来事があったりして、非常にドラマティックな展開があったが、それについてはまた別の記事にまとめようと思う。
とにかく、日本人が唯一パライバトルマリンの採掘権を所有する鉱山で、どんなに時間がかかっても日本人の手でパライバトルマリンを発掘しようという方向にまとまり、私は他の4人よりもひとまわり年下ではあるものの、このプロジェクトに参加することになった。もちろん、金銭的な負担もあるが、これはお金の問題ではなく、ロマンを追いかける話であり、壮大で素晴らしい物語に心が躍った。
その後、第二回予備調査が行われることとなり、オブザーバーとして中央宝石研究所の北脇博士、国立科学博物館の門馬博士、株式会社MIYUKIの社長、そしてブラジル人の鉱物学者2名が参加することに。さらに、プロのカメラマンが同行し、視察の様子を撮影することになった。
北脇博士は現在の宝石研究第一人者で、教科書の中の人、門馬博士は「クレージージャーニー」などに出演されたことがあるテレビの中の人。こんな有名な方々と一緒に鉱山を見て回れるなんて、最初は緊張したが、みんなとても気さくで素晴らしい方々だったので、緊張したのはほんの一瞬でした。
とにかく、この時は多くの鉱山を視察したのですが、別の記事にその時の様子を載せていますので併せてお読みください。

この写真、一見すると川のように見えますが、実は前回掘削した採掘現場です。前回の調査時は乾季だったため、水の確保に苦労しましたが、今回は雨季。今度は溜まった水を排水するのに苦戦しています。
自然相手の採掘は、本当に一筋縄ではいきません。

前回はまるで砂漠のようだった採掘現場も、雨季を迎えると一変。草木が生い茂り、まるでジャングルのような景色になっていました。この写真は、以前ベースキャンプを設置したあたりですが、まさかここまで様子が変わるとは…。
自然の力に改めて驚かされます。

ちなみに、この写真の場所は10年以上にわたって採掘が行われていた場所です。今ではすっかり水が溜まり、大きな湖のようになっています。
かつての採掘現場とは思えないほどの変化に、時の流れを感じます。

今日もまた、風車の向こうに夕日が沈んでいく。日本の裏側で沈んだこの夕日は、やがて日本で朝日となって昇るのだろう。
ここは風が強い地域で、風力発電が盛んに行われている。雄大な風車が並ぶ景色は、この土地の特徴を象徴しているようだ。
実はこの後、ちょっとした…いや、かなり大きなトラブルが発生し、採掘はほとんど進められず、撤退を余儀なくされました。しかし、それで終わりではありません。パライバ鉱山の開発計画は着実に前進しており、2024年9月には再びこのブラジルの地へ赴くこととなりました。次の目標はインフラ整備。本格的なパライバトルマリン採掘計画が、いよいよ動き出します――。
ただ、それはまた別のお話。